私にとって、コーヒーはただの飲み物以上の存在です。朝の始まりを告げる儀式でもあり、心を落ち着かせ、頭をクリアにする大切な時間です。長い間コーヒーが好きだと思っていましたが、その奥深さに触れることはありませんでした。
ある日、友人からスペシャルティコーヒーの豆をもらい、自分で豆を挽いてコーヒーを淹れてみたことで、その魅力に気づき、コーヒーの世界にのめり込むことになりました。
今回は、豆からカップに至るまでのコーヒーの旅を、私の体験を通してお話ししたいと思います。
豆との出会い
コーヒーとの新たな出会いは、友人が贈ってくれた一袋のコーヒー豆から始まりました。「この豆で自分でコーヒーを淹れてみてほしい」という友人の言葉に、手焙煎のスペシャルティコーヒー豆を受け取りました。
それまで私は、市販の挽いたコーヒーを使ってフィルターを通し、コーヒーメーカーで淹れるのが日常でしたが、その豆を手に取ったとき、特別な体験が待っている予感がしました。
友人が選んでくれた豆は、エチオピアのイルガチェフェ産でした。袋を開けた瞬間、フローラルな香りが広がり、ただその香りを楽しむだけで心が弾むのを感じました。
初めて自分で豆を挽き、コーヒーを淹れた朝、キッチン全体が香りに包まれ、いつもの朝が少しだけ特別に感じられたのです。
豆を挽く喜び
それまでコーヒー豆を挽くという作業は、私にとって手間のかかる、専門的なプロセスのように思えていました。
しかし、実際に手にミルを取り、豆を挽いてみると、その行為が一種の瞑想のようであることに気づきました。挽く際のザクザクという音、挽きたての豆から立ち上る香り、これらの瞬間が心地よく、これこそが一杯のコーヒーの本当の始まりだと感じたのです。
豆を挽くことで、コーヒーの風味が一層豊かになるのを実感しました。豆の種類や焙煎具合によって香りや味が微妙に変化することにも驚きました。
同じ豆でも、挽き目の粗さや細かさで風味が変わるため、毎朝の豆挽きが楽しみとなり、どの豆を使うか、どう挽くか、どう淹れるかを工夫するようになりました。
ドリップの魅力
豆を挽き終えると、次はドリップの時間です。最初はドリップの技術が難しいと感じていましたが、友人からもらった豆を使って何度か試しているうちに、そのプロセスがとても楽しいことに気づきました。
お湯を豆に注ぐタイミングや注ぎ方、注ぐスピードなど、同じ豆でも淹れ方次第で異なる風味が引き出されるのです。
最初のうちは、苦味が強すぎたり、逆に薄くなりすぎたりすることもありましたが、試行錯誤を重ねるうちに自分の好みに合った淹れ方を見つけることができました。
このプロセスを通じて、「完璧な一杯」を追求する楽しさを知り、今では毎朝のドリップが一日の楽しみとなっています。
カップに注がれた一杯
こうして丹念に淹れたコーヒーをカップに注ぐ瞬間は、一日の始まりを象徴する特別な時間です。
カップから立ち上る香りを嗅ぎながら、ゆっくりと口に含むと、そこには豆からカップまでの全てのプロセスが詰まっています。一杯のコーヒーが、ただの飲み物ではなく、日常の中の小さな喜びに変わったのです。
今では、コーヒーを飲むことがただのカフェイン摂取以上のものとなり、その香りや味わいを楽しみ、さらにその背景にある農家の努力や焙煎者の技術、そして自分自身の工夫や手間を感じることができるようになりました。
この一杯には、そのすべてが詰まっているのです。
新たなコーヒーとの関係
豆からカップへと続くコーヒーの旅は、私に新たな視点をもたらしました。毎朝のコーヒータイムが、単なる習慣から、特別な時間へと変わり、私の生活に新しいリズムと喜びをもたらしてくれたのです。
この体験を通じて、コーヒーへの感謝の気持ちが芽生えました。一杯のコーヒーができるまでには、多くの人々の努力と、自然の恵みが詰まっていることを知り、その一杯を丁寧に淹れることで、日常の中に小さな感動を見つけることができるようになりました。
今では、友人や家族にも自分で豆を挽いて淹れたコーヒーを提供し、その魅力を共有することが楽しみの一つとなっています。コーヒーを通じて人とのつながりや、日常のささやかな感謝を感じることができるようになりました。
さいごに
「豆からカップへ」というコーヒーの旅は、私にとって単なる趣味以上のものとなりました。それは日常の中で小さな幸せを見つけることができる時間であり、自分自身と向き合う大切なひとときです。この旅を通じて得たものは、コーヒーの知識や技術だけでなく、心を豊かにする新たな視点でした。
これからも、この旅を続けていきたいと思います。一杯のコーヒーが教えてくれる新しい発見や喜びを大切にし、同じようにコーヒーを愛する人たちと、その楽しさを共有し続けたいと願っています。